「適職」なんてものは存在しません。
エレコの診断アンケートに書かれている悩み事の中で、
わりと多い内容のひとつに・・・・
「適職が知りたい」
みたいなのがあります。
これから就職をする学生さんはもちろんのこと、
20~30代くらいの若い人たちで転職希望がある人なんかは、
とりわけこういうことが気になるみたいですね。
「私はどんな仕事をしたら自分らしさを発揮できるんだろう?」
っていう。
まぁ・・・・気持ちは分かります。
就職してから「この仕事向いていない!」ってなるの、嫌ですもんね。
っていうか、こういうことに悩んでいる人は、
むしろそうやって就職してから向いていないことを痛感したからこそ、
「向いている仕事がしたい!」って思ってるのかもしれませんね。
もっと、自分の得意分野を活かせる、自分の属性に合った仕事をしたい、
そういう職業に就きたいと思うのは、気持ちとしては至極真っ当なものだろうなと思います。
ただ、その上で、こういう悩み事に対して僕はいつもこうお答えしています。
そう、タイトル通り、
ㅤㅤ
 『適職』なんてものは存在しません。
って。
もちろん、職業そのものが自分の属性にまったく関係ないとは言いません。
ある程度、その職業の大まかな業務内容によって、
向き不向きみたいなのはありますから、例えばですが、
「『保険の営業マン』と『システムエンジニア』だったらどっちの方が向いているか」
という感じの質問にであれば、あなたのエレコからすると
こっちの方が可能性高いんじゃない?みたいなことをお伝えできますが。

しかし、これは本当に大まかな傾向性でしかありませんので、
「和食と洋食どっちが好き?」レベルの話です。
そんなざっくりと聞かれても分かりませんよ、みたいな。
(ちなみに僕は、ジャンルで聞かれると和食の方が好きですが、
一番好きな食べ物はカレーです笑)
仕事の向き不向きに関係する要因は、
僕は大きく分けて3つあると考えておりまして、確かに、
職業・・・・つまり「業務内容」っていうのも、その1つではあります。
けれども、影響度合いとしては、一番小さいものなんじゃないかなと思うのです。
なお、仕事の向き不向きに関係する3つの要因は、以下です。
ㅤㅤ
(1)職業(業務内容)
(2)ワークスタイル(働き方・仕事の仕方)
(3)職場環境・人間関係
そして、(2)と(3)こそが、全体の8割、
いや9割くらいの影響力を持っているのではないかと、僕自身は考えています。
ちょっと、それぞれを簡潔に説明します。ㅤ

(1)職業(業務内容)

おそらく、世の中のほとんどの人が
「適職」を考える時に勘案することは、これだと思います。
まぁ、これによる向き不向きは、確かにナシではありません。
例えば上に挙げた事例の「保険の営業マン」と「システムエンジニア」で見れば・・・・
「保険の営業マン」は毎日どんどんお客さんに会いまくって、
関係の構築や商品の説明などを行い、文字通り「営業」をしていくイメージですよね。
そして、それがまぁメインの業務内容とくれば、
エレコ的には「×」の人が向いているということになります。
一方で「システムエンジニア」は、
数字・データやコードなどを扱う理系の業務内容であることが多いため、
であれば「×」の人が向いていることが多いでしょう。
そんな感じでざっくりと向き不向きの方向性は・・・・
「見えた気になる」のはあると思います。
ですので、このレベルでよければ、
「適職診断」みたいなのもできなくはありませんが・・・・
しかし、よくよく考えていただきたいんですが、
「保険の営業マン」だって、いわゆる営業だけしかやっていないわけではありません。
事務仕事をまったくしないわけではないでしょう。僕の友人にも何人かこの職業に就いている方がいらっしゃいますが、
事務仕事はもちろんのこと、お客さんのライフプランを作るための
データ分析なんかもやってることが多いです。
少なくとも、「人に会うのが好きだから」っていうだけではできないでしょうし、
逆に「事務作業が苦手だから」っていう理由でも無理でしょう。
同じように「システムエンジニア」だってそうです。
ずーっと、データをいじったりコードを書いていたりするだけが業務じゃないでしょう。
システムの説明をしに客先へ行かなければならないことだってあるでしょうし、
コミュニケーションが求められる場面も多いでしょう。
「人と接しているよりデータと向き合っている方が楽だから」
みたいなヒキコモリ発想で、ラクラクやってられる職業ではないはずです。
そうしたことを考えると、業務内容だけで考えたとしても、
多くの場合、「そもそも業務内容が1つの属性に偏っているわけがない」ので、
この条件だけで職業の向き不向きを論じることは不可能なんです。
どんな職業にも、自分にとって得意な業務と
苦手な業務が存在するよね、っていうのが真実だからです。
ㅤㅤ
その上で、もう2つの要素についてもお話しますと・・・・

(2)ワークスタイル(働き方・仕事の仕方)

これが、業務内容よりもよっぽど重要なものだと思います。
例えば・・・・
引き続き「保険の営業マン」と「システムエンジニア」を例に出しますが、
先ほど書いたように、業務内容の傾向性で言えば、
「営業=×」ですし「システムエンジニア=×」です。
しかし僕の友人の中には、
×」の「保険の営業マン」もいますし、
×」のシステムエンジニアもいます。
どちらも、メイン業務は苦手分野とされるものです。
でも、どちらの人もその仕事を楽しんでやっています。
では、なぜ彼らが、業務内容だけ見れば
「向いていない職業」でそんなに楽しく働いていられるかというと・・・・
ワークスタイルが、彼らの属性に合っているからです。
まず、「×」の「保険の営業マン」のAさんは、
確かに沢山の人とアポを取って新規営業をかけていくのはすごく苦手だそうです。
そういうバリバリしたやり方は性に合わないと最初から分かっていたので、
Aさんはそこには注力せず、基本的には既存顧客のフォローをメインにしています。
すでに繋がっている人との関係を深めることなら、
新規営業と比べればよっぽどできるからです。
既存顧客ばかりとやりとりをしていても
新規が取れないじゃないかと思われるかもしれませんが・・・・
Aさんは、(そりゃ「×」の超パワフルな人ほどじゃないにせよ)
ちゃんと新規顧客も増やしているんですよ。
それは、既存顧客からの紹介にて、です。
既存顧客としっかり関係構築できているからこそ、
そこから友達の紹介などが発生するんですよね。
で、Aさんにしてみれば、気心知れた人の友達であれば、
そこまでハードル高くなくコミュニケーションが取れるので、
無理せずに済んでいるということです。
×」の営業マンのように、交流会など大勢の人と出会える場所に出ていって
名刺交換をすることはしないままで、十分に成績を上げているのは、
そういった「×」に合った働き方=ワークスタイルができているからです。
また同じように、「×」の「システムエンジニア」であるBさんもです。
Bさんは、ひとつのことにじっと集中しているのは苦手意識があったので、
社内や客先に常駐するタイプの働き方はしないことに決めました。
フリーランスのエンジニアとして、パソコン1台持って
好きな時に好きな場所で仕事ができるような状況を作っているため、
毎日違う場所でのびのびと仕事をしているんだそうです。
また、(僕自身は専門家じゃないので理解しきれませんでしたが)
エンジニアといっても色んな種類のエンジニアがおり、
Bさんは、ひとつのコードをむちゃくちゃ極めて
専門性を高く発揮するようなジャンルではなく、
むしろノーコードなど高いプログラミングスキルを必要としないものを
メイン商材として扱って、その分幅広い案件に対応できるようにしたそうです。
ひとつのものを極めようとすると楽しくなくなるけど、
色んなものを広く浅く見ている分にはすごく楽しくやれているとのことで、
そういう働き方=ワークスタイルが、「×」的にはピッタリきています。
そういう感じのことなんです。
業務内容の大部分が「×」であったとしても、
働き方を「×」にできるなら、それを自分にとっての適職にすることはできます。
逆もまた然りで、同業者の多くが「×」であるような業界でも、
×」の働き方をするルートはあるので、そこを選べば適職と感じることはできます。
業務内容よりも、よっぽどこっちの方が重要だと思いませんか?
もちろん、業務内容も「×」で、
ワークスタイルも「×」っていう状態なら、
それこそ迷いなく適職でしょう。
でも、じゃあ業務内容とワークスタイル、どっちの方が優先順位が高いかというと・・・・
僕はよっぽど、ワークスタイルの方が優先だと思うんですが、どうでしょう?
×」の営業マンなのに、
オフィスに閉じこもった働き方を余儀なくされたら、しんどくないですか?
(それこそコロナ禍の真っ最中はそういう現象も起きたでしょう)
×」のエンジニアなのに、
バンバン客先に会いに行かなければいけない働き方だと、
辞めたくならないですか?
(それこそフリーランスにはそれが問題で続かない人も多いです)
そういうことだと思います。

(3)職場環境・人間関係

最後に、こちらについても。
これはわりと多くの人にとって、
「皆まで言わずとも分かります」みたいなことではないでしょうか。
だって、よくよく考えていただきたいんですが・・・・
就職する時に、業務内容もワークスタイルも自分に合っていると感じていても、
職場の人間関係が地獄だったら、その会社に居続けたいと思いますか?
多分、人間関係を比較的重視しない「×」側の人たちですら、
自分にとってクソみたいに思える上司や同僚に囲まれ、
日々パワハラなどを受けるような職場においては、
どんなに好きで自分に合っている業務といえど、続けられはしないでしょう。
逆に、職場環境や人間関係が良好であれば、ちょっと自分の苦手な業務だなって思っても、
周りの人たちのために頑張ろうと思えたり、
純粋に自分を成長させる機会だと思って学べたりするものではないでしょうか。
そういうことを考えると、結局は、
実際にその仕事を始めてから構築される人間関係の質の前では、
業務内容自体が適しているかどうかなんて、どうでもよくなってしまうんです。
どんなに業務内容やワークスタイルで「適職」を意識したとしても、
人間関係という前提が崩れたら、そんなものは存在しなくなってしまうんですよね。
ですから・・・・
自分の、仕事への向き不向きを考える際には、これを度外視するわけにはいかないんです。
「人間関係が最悪だったら職場でやってた業務内容=向いていない仕事」っていうふうに、
脳が解釈してしまうこともありますしね。
というようなことです。
「『適職』なんてものは存在しません」って、僕が言うのは。
少なくとも、職業ごとの表面的な「業務内容」だけを見て、
適しているかどうかを考えるなんて、的外れもいいところなんですよ。
意味がないわけではないですけど・・・・
うん、まぁ、でもあんまり意味がないって、僕は思ってしまいますかね笑
だから、性格診断、からの「適職診断」みたいなのって、
あんなものの大半はマユツバだと思いますよ。
そういう情報が無いよりはあった方がなんか安心感がありますよねっていうレベルのもの。
性格診断では、適職診断なんか、理論上不可能なんです。
だって、この投稿で説明したように、
◆どんな職業もその業務内容が幅広く、向いている業務もあれば向いていない業務もある
◆業務自体が向いていなくても働き方が合っていればどんな職業でも楽しく働ける
◆どんなに業務内容や働き方が合っていても職場環境が悪ければその仕事を楽しいとは感じられない
ということだからです。
エレコでも、よくリクエストは受けるんですけど、
「適職診断」を実装しないのはこれが理由です。
実は職業図鑑みたいなのをデータベース化してあるんで、
100種類くらいの有名な職業については、それぞれメイン業務を
基準に合う・合わないを判定するシステムはもう作れる段階にあるんですよ笑
でも、それをすると・・・・
どうしても、例えば「システムエンジニア」だったら、
×」の人には適合率が高いって結果が出ちゃう。
けれど、「×」がみんな、
どんな場所でも「システムエンジニア」やれるかっていうとそうじゃなくて、
その人の専門分野(業界)にもよるし、
働き方にもよって現実的に楽しめるかは違うわけです。
まぁ、人間関係についてはこっちの責任じゃないなとは思いますけど、
「適職診断」で向いているって判定した職業にその人が就いて、
それで不幸になってしまったら、それはこっちにも責任があるじゃないですか。
(というかそこに責任を持たないような浅い「適職診断」だったら
それこそ診断する価値が無い)
そう思ったら・・・・そんな無責任な診断なんか、作れないですよね。
なので、世の中の「適職診断」は、僕にとってはすべて、
「無責任な詐欺システム」か、「診断というよりは占い」か、だと思っています。
後者は、占いだと思って見るなら面白いからアリですが、
バックエンド商品に繋げるための前者だとしたら、
個人的にはそういうのはクソだと感じます。
おっと、最後の最後にちょっと、私情が入りまくってしまいました笑
が・・・・でもこれでなんとなく、ご理解いただけましたでしょうかね。
ダメですよ、「適職」なんていう、甘い言葉に流されてしまっては。
そんなもの、存在しませんから。
強いて存在するとしたら、それは先に挙げたような
3つの基準すべてをクリアしてこそ見つかるものであり、
少なくとも机上で診断やら分析やらをしただけで分かるような、
簡単なものではありません。
冒頭の方にも書いたように、
「適職」を探したくなる、その気持ちは分かりますけどね。
でも、あんまりオススメしません、そういうのに縋ることは。
「適職」なんか探さなくても、そういう言葉に甘えなくても、
ちゃんと自分が自分の才能を理解し、それを発揮できるような働き方と、
発揮させてくれる人間関係を構築できれば、業務内容自体は何をやってたって、
結果的に「天職」になりますから、大丈夫。
そんな誘惑の言葉に惑わされず、
しっかり現実と向き合っていっていただけたらなと思います。

 

適職なんて言葉が幻想だっていうことは
ちょっと考えれば分かりそうなもんだけれども
みんな結構これに騙されてしまうんですよね。
騙されるっていうか縋ってしまうのかもしれない。
甘美な響きですもんね適職って。
「そういうものがどこかに存在していて自分がまだ出会っていないだけ」
ってそう思いたくなるほど今が苦しいんですよね。
だから本当にその気持ちには同情してあげたい。
でも同情はしても真実は変わらない。
適職なんてものは存在しません。
そういう幻想に囚われているうちは
その苦しみからは逃れられないのです。
だからちゃんと向き合いましょう。
自分自身と周りの人たちとの人間関係に
それが本当の適職探しの始まりです。


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